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海外ドラマファンなら押さえたい、アメリカのテレビ放送局まとめ

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超がつくほどの盛り上がりで「第3次海外ドラマブーム」とも言われる今日この頃。あれよあれよという間にケーブル局やらネット配信やらと、視聴方法も多様化した。そこで、海外ドラマ・ファンなら知っておくべきアメリカでドラマを放送しているテレビ局の今についておさらいしておこう。

まずは3大ネットワークから、最古参の『NBC』 (National Broadcasting Company)

ニューヨークはマンハッタンのど真ん中、ロックフェラーセンターに本部を置く1938年開局のテレビ局。現在はNBCユニバーサルグループの主体企業だ。
地の利を生かしたオープンスタジオからの生中継ビッグスター・パフォーマンスはアメリカ国民にとっておなじみの光景。グラミー史上初「最優秀アルバム賞」2回受賞に輝くテイラー・スイフトをはじめ、歌手・ハリウッドスター・セレブ・政治家などなど数々の著名人がこの地に降臨しているのだ。もしかしたら映画・ドラマに欠かせないプロモーション・スポットとしては全米No.1と言えるかもしれない。
また、3大ネットワークというだけあって全米を網羅しているだけではなく、ニュース、天気、アートなど幅広い専門ケーブル局をも多数傘下に収めている。海外ドラマ・ファン的には、オリジナルSF系ドラマで人気のSyfyが傘下である点はポイント高し。詳しくはSyfyの項をチェックされたし。
肝心のドラマのお話だが、さすがは『NBC』、代表作を絞るのがなかなかに難しいほどたくさんのビッグ・タイトルを抱えている。古いところではおじいちゃん達が泣いて喜ぶ懐かしの西部劇『ララミー牧場』、リアルタイムで観たことなんてないのに、なぜだかあの「ララミ〜〜」っていうゆるーい歌がみんなの脳裏に浮かんでしまう。そして初海外ドラマはこれという人続出の『大草原の小さな家』、世界中で知らない人は多分いない『刑事コロンボ』(1968年〜1978年版。1989年からのシリーズは『ABC』にて放送)、近年の本格クライム・ミステリー流行りの礎を築いた『ロー&オーダー』、医療ドラマの金字塔『ER緊急救命室』、ファンタジーの新境地を開拓した『HEROES』や『GRIMM/グリム』などなど、さすがは老舗放送局だけあって素晴らしいラインナップだ。

3大ネットワークの2番手は『CBS』(CBS Broadcasting, Inc.)

テレビではほんのちょっとだけ『NBC』に遅れをとったものの、ラジオ部門ではいち早く全国ネットワークを確立していたマスコミ界のパイオニアとも言われるのが『CBS』だ。
初期の代表的なドラマは、何と言っても元祖シットコムの『アイ・ラブ・ルーシー』。この番組のヒットがなかったら、海外ドラマにシットコムというジャンルはなかったかもしれない。うーん、先人に感謝。危うく『ママと恋に落ちるまで』も『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』も見られないところだったぞ。
他にもクリント・イーストウッドの出世作西部劇『ローハイド』、スリルとサスペンスの醍醐味を教えてくれた『スパイ大作戦』や『トワイライトゾーン』、ダークなアメコミ・ヒーローの先駆け『超人ハルク』などなど、今のドラマ隆盛に繋がる名作が目白押しだ。
近年は増殖する『CSI』や『NCIS』ご一家の人気ぶりや『HAWAII FIVE-0』のリメイクなどが注目された。
ちなみにテレビ創世記から続く『NBC』とのライバル関係は今なお絶賛継続中。同じニューヨークを拠点とする老舗テレビ局として、どちらも一歩も譲らない構えだ。今や映画『スターウォーズ』シリーズに次ぐ人気宇宙ものである『スター・トレック』のテレビ第1作『宇宙大作戦』が『NBC』、第2作『新スタートレック』第3作『スター・トレック ディープ・スペース・ナイン』が『CBS』放映であるのも何かの因縁か大人の事情がありそうだ。まあ、切磋琢磨していいドラマ作ってくれさえすれば、ファンとしてはどっちでもいいんだけどね。

3大ネットワークの最後は『NBC』の弟分『ABC』(American Broadcasting Company)

なんで兄弟かと言うと、もともと『NBC』のラジオ部門から独立して出来た会社だから。テレビ放送を開始したのは1948年のことで、現在の親会社はウォルト・ディズニー・カンパニーだ。3大ネットワークの中では一番後発になるが、そのドラマ・ラインナップは全く引けを取らない。むしろジャンルにとらわれないドラマ作りは、『NBC』や『CBS』よりも柔軟性があるかもしれない。
テレビ放送開始直後には本格西部劇『ローンレンジャー』を放送、キモサベ・ブームを巻き起こした。「インディアン嘘つかない」の名言? もこのドラマが発信源で。その後も医療ドラマのルーツ『ベン・ケーシー』や日本でも超有名な『奥様は魔女』など、50年代60年代を代表するドラマを次々と世に送り出した。
開局以来後発3番手の地位に甘んじてきた『ABC』に転機が訪れたのは、1977年のこと。ミニシリーズ『ROOTS/ルーツ』が驚異的なヒットを記録し、とうとうNo.1の座に躍り出たのだ。
映画『オデッセイ』にも登場した伝説のコメディ『ハッピー・デイズ』、日本でも根強い人気を誇る『刑事スタスキー&ハッチ』や元祖『チャーリーズ・エンジェル』などなどアメリカーンなドラマ作りがお得意なのかと思いきや、『ツインピークス』で不可解ワールドを展開させるという百面六臂ぶり。『LOST』『デスパレートな妻たち』『アグリー・ベティ』といった横綱級海外ドラマも量産している。さすがはエンタメ界の横綱=ディズニー・ファミリーの一員だけのことはある。
近年は『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』『スキャンダル 託された秘密』など、黒人女性プロデューサー=ションダ・ライムズ作品の人気が高い。

3大ネットワークはもう古い? 4番目の顔『FOX』

旧御三家に加えて「4大ネットワーク」と呼ばれるようになってから久しいのが『FOX』。本格的なネットワークとして始動したのは1985年だ。親会社である20世紀FOXは映画界でこそ君臨していたものの、テレビ界では爪弾き者。なかなかうまいこといかなかった。実は1950年代からテレビ進出を狙ってたのにね。一時はネットワーク立ち上げに参戦するも惨敗。「映画屋さんは番組プロデュースくらいで我慢しとけや」と言われたかどうかは知らないが、本流への進出は叶わなかった。
そんな『FOX』がメディア界のラスボス=ルパート・マードック氏の傘下に収まりネットワーク進出したとたん、あれよあれよの快進撃を見せた。大人向けシニカル・アニメの決定版『ザ・シンプソンズ』のブレイクでホップ。アメリカン・フットボールの放映権を『CBS』の5倍、16億円という巨額の札束で奪い取ってステップ。そして『ビバリーヒルズ高校白書』『ビバリーヒルズ青春白書』『メルローズ・プレイス』といった青春ドラマの大ブレイクと革命とも言われたSF『X-ファイル』でジャ〜ンプしたのである。
その後も『アリー my Love』や『The O.C.』と言った若者向けドラマが人気を博し、『FOX』の地位を不動のものにしていった。そして満を持しての『24 -TWENTY FOUR-』からの『プリズン・ブレイク』。あの頃日本でも一大ブームとなったが、本国アメリカではもっとすごいことが起きていた。なんと3大ネットワークを差し置いての視聴率第1位を獲得したのだ。
その後もサスペンスの『FRINGE/フリンジ』やミュージカル・ドラマ『Glee』などの大ヒットが記憶に新しい。2015年には社会現象にもなった『Empire 成功の代償』の大ヒットと、その勢いはもうトルネード級。追うものから追われるものになった『FOX』の今後はますます要注目だ。

新参者だって黙っちゃいないよ『The WB』&『UPN』からの『The CW』

『The WB』の母体企業はThe Warner Bros. (WB) Television Network。『FOX』の快進撃を目の当たりにしたワーナー・ブラザースが、番組製作だけでなく放送分野にも進出を図って設立したのが1995年。開局当初はシットコムやら『ABC』の払い下げ番組を放送する、放送時間も超短い弱小局だった。が、オリジナル・ドラマ『バフィー 〜恋する十字架〜』のヒットで状況は一変。『ドーソンズ・クリーク』『フェリシティの青春』といった10代の若者向け人気ドラマを次々と打ち出し、その全てをヒットさせた。
時を同じくする1995年、パラマウント映画とバイアコムの合弁で設立されたのが『UPN』(United Paramount Network)。こちらは『スター・トレック:ヴォイジャー』の放送で幕を開けた。その後『スター・トレック:エンタープライズ』や『Iron Chef USA』『America's Next Top Model』などを放送し、個性的なテレビ局として知られていた。が、親会社がころころ変わったりでなかなか安定出来ず。最後はCBSコーポレーション傘下になっていた。
『The WB』も『UPN』もカルト的な人気はあったものの、3大ネットワークに食い込むほどの力をつけた『FOX』には遠く及ばなかった。それぞれの親会社ワーナーとCBS の話し合いにより、2006年にいったん閉鎖&合併して『The CW』として再スタートを切ることとなった。それにしても「CW」のCはCBS、Wはワーナーからそれぞれ1文字ずついただいたわかりやすすぎる命名センスはいかがなものだろうか。まあ、「WC」にならなくてよかったけど。
それはさておき新生『The CW』の戦略はターゲットの絞り込みだった。大規模ネットワーク軍団が18歳〜49歳という幅広い層に訴求したいのに対して、弱小ネットワーク『The CW』のターゲットは18歳〜34歳と若め。しかも特に女性を狙っているという。そしてまさにその層にバッチリ受け入れられたのが『ゴシップガール』だった。若い女子の憧れるハイセンスでゴージャスなセレブライフと恋愛ジグゾーパズルで一気に社会現象となったのだ。『FOX』で大人気だった『ビバヒル』シリーズの続編『新ビバリーヒルズ青春白書』や『セックス・アンド・ザ・シティ』のスピンオフ『マンハッタンに恋をして ~キャリーの日記』もターゲットは同じ。『The CW』での放映がベスト・マッチだったと言えるだろう。
お若いお嬢さん路線でしっかり軌道に乗った『The CW』。次は男子を狙えとばかりに、ティーン人気の王道=吸血鬼ものの『ヴァンパイア・ダイアリーズ』やスーパーヒーローものの『ARROW/アロー』、『THE FLASH/フラッシュ』などもヒットさせている。

ケーブル局の大躍進がテレビを変える?『HBO』&『Showtime』

4大ネットワークや『The CW』は全国的に放送しているいわゆる地上波局である。一方『HBO』や『Showtime』はいわゆるペイパービュー方式のケーブル局だ。日本でいうとWOWWOWみたいな感じ。広告収入で経営しているわけではないので、「スポンサーの意向」みたいなしがらみがない。ということでエロい感じ、グロい感じ、イっちゃってる感じ、偏っちゃってる感じなどなど何でもござれなのだ。
1972年開局の『HBO(Home Box Office Inc.)』はその名の通り「自分の家を映画館みたいにしちゃいましょ」がコンセプトなんだそう。だからこそ映画の放映と共にオリジナル・ドラマ作品にこだわってきた。(実は同じくらいボクシング中継にも力入れてるけどね。)その結果が、7個のエミー賞に輝く『Sex and the City』、ケーブル局初のエミー賞ドラマ作品賞に輝いた『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』、マーティン・スコセッシのテレビ初プロデュース作品『ボードウォーク・エンパイア 欲望の街』、1度のエミー賞で史上最多12部門を獲得した傑作『ゲーム・オブ・スローンズ』といった注目作品の量産につながっているのだ。オスカー俳優マシュー・マコノヒー&ウディ・ハレルソンという2大映画スターを配し賞レースを総なめにした『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』のように、もはやケーブル局の次元を超えたと言える作品作りは注目の的だ。
『HBO』に遅れること4年、1976年に開局したのが『Showtime』。『HBO』と同じくボクシング中継に力を入れているケーブル局だった。ボクシング以外誰も見てないと言われていた時期が長かったのだが、2006年の『デクスター 〜警察官は殺人鬼』から一気に評価がアップ!16世紀のイギリスを思いっきり俗っぽく描いた『THE TUDORS〜背徳の王冠〜』やR—15指定のレズビアン群像劇『Lの世界』、アルカイダとの戦いを描いた『HOMELAND』など人気問題作を立て続けに提供するようになった。
今や4大ネットワークをも脅かす存在になってきたこのケーブル2大局だが、なんと先頃ネット経由で視聴できる新しい放送形態を始めた。この方式が主流になっていくのか、はたまたネットワーク局の逆襲なるのか、今後の展開から目が離せない。

続々登場する伸び代がまだまだありそうなケーブル局

ネットワーク局のように万人ウケするものを放送しなくても良いのがケーブル局のアドバンテージ。そのためニッチなマニアに向けた専門チャンネルがたくさんある。中でも最近ドラマ部門で大きく成長しているのが、SF専門の 『Syfy』と映画専門『AMC』である。
『Syfy』の快進撃が始まったのは『GALACTICA/ギャラクティカ』がヒットした2004年あたりから。その後も『ユーリカ ~地図にない街~』、『ウェアハウス13 ~秘密の倉庫 事件ファイル~』、『ALPHAS/アルファズ』といった人気作を続々と送り出してきた。最近ではオリジナル・ドラマに加えてカナダ・ドラマの輸入放映にも力を入れている。キスで人の命を吸い取っちゃう『ロスト・ガール』や未来から来た女性警護官が活躍する『コンティニアム CPS特捜班』などが話題の的だ。
『AMC』は「American Movie Classics」の略称であったことからもわかるように、もともとは映画専門チャンネルだった。ところが、エミー賞の常連『マッドメン』を皮切りに、ゾンビドラマの決定版『ウォーキング・デッド』、そしてテレビドラマの新境地を切り開いたとも言われた『ブレイキング・バッド』とメガヒットを連発。近年の賞レースには欠かせない局として名を馳せている。
『CAMELOT 〜禁断の王城〜』や『スパルタカス』などのアダルト時代劇で人気の『Starz』や、『SUITS/スーツ』『ホワイトカラー』などかっこいい男たちが出てくるドラマで人気の『USAネットワーク』も勢いのあるケーブル局軍団の1つだ。特に『USAネットワーク』は、最新作『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』でなんと2016年ゴールデングローブ賞テレビ作品賞受賞を受賞していて、今最も注目されているケーブル局とも言える。

おわりに

いかがだっただろうか。日本では地上波以外でオリジナル・ドラマを制作しているのはWOWWOWくらいのものだ。が、アメリカは大小取り混ぜての群雄割拠、まさに戦国時代に突入している。しかも敵はテレビだけではない。Netflix やAmazon Instant Videoといったネット配信のオリジナル・ドラマも急成長しているからだ。いやはや、ドラマは一体どこへ向かっていくのか、誰がドラマ界を制することになるのか。テレビ産業革命を目の当たりにできるなんてファン冥利につきるなあ。

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